東日本大震災にあたって
このたびの東北関東大震災による犠牲者に深い哀悼の意を表するとともに、被災地の皆様には心からのお見舞いを申し上げます。そして、一日でも早く復興への道筋がつくことをお祈り申し上げます。
東日本地域を襲った大震災は地震、津波による激甚な被害とともに、福島第一原子力発電所が制御不能に陥るという未曾有の大事故とそれに伴う放射性物質による広範な環境汚染を引き起こしています。原発事故は避難を強制された周辺住民はもちろんのこと、農作物の放射性物質汚染による出荷停止や、風評被害によって窮地に追い込まれる生産者など、広汎な地域やその土地に根付き暮らしを立ててきた人びとに有形無形の被害を与えつつあります。また、事故現場で懸命に復旧作業を続ける関係者の健康影響についても心配されるところです。こうした災害の継続、被害の複合的な拡大が、救助から復旧、そして復興への円滑な移行を妨げ、地震災害、津波災害の被災地の全般的な支援活動を難しいものにし、先を見通すことのできない不安のなか困難な避難生活が長期化することも大いに懸念されています。災害からコミュニティや一人ひとりの生活をどう再建していくのかという長期的で大きな問題も横たわっています。
このような事象は従来から環境社会学の主要な研究テーマであり、私たちは、あくまでそこに生活する人の立場からそれらの研究を行ってまいりました。私たちはいま、圧倒される現実を前に、研究の力不足であったことを深く感じておりますが、それでもなお、地震、津波、原発事故それぞれの災害被災地における今後の復興は、それぞれの人びとの被害の実態に寄り添いながら長いスパンで行われなければならないことを改めて確認するとともに、私たち自身も環境社会学としてできることを考え、実践して行きたいと思います。
生活者、社会的弱者の生活の現場の視点に立って考え、社会にとって望ましい持続性、堅牢さ、そしてしなやかさについて深い問いを発しつつ、今後の社会が目指すべき方向についてのビジョンを提示するという環境社会学特有の学のあり方を改めて自覚、認識し、貢献していきたいと思います。フィールドの現場から発せられる問いが、私たちの「豊かな」社会・経済システムを支えてきた価値観や生活世界の存在根拠を問う点にまで及んでいることをしっかりと受け止め、そして、これによって震災の被害に遭われ方々との共感が可能になると信じ、私たちは、その思いを復興へ向けた取り組みに結びつけるべく必要な活動と情報の発信を継続して行っていきます。