従来からアート的手法を用いてきた環境社会学の立場から、アートベース・リサーチとの接続可能性や課題を検討する研究例会を4回シリーズで開催します。会員外の方も参加可能です。多くの方のご参加をお待ちしております。
「アートベース・リサーチ」を考える研究例会シリーズ
―環境社会学における理論的・実践的可能性の検討―
趣旨
環境社会学において、人と自然との関係性、人同士の関係性における合意形成など、曖昧性を持ちながらも社会的に重要な課題を、実践を通じて理解することが重要なテーマとして位置付けられてきた。フィールドワークを通じた調査研究の過程で、聞き取り調査における写真による資料提示型インタビュー(フォトエリシテーション)(嘉田,1997)や観察記録を冊子にまとめた調査成果の可視化(小坂,2007)、子どもが描いた風景画をワークショップで読み解く試み(富田,2025)や、パタン・ランゲージを用いた身体性を伴う参加型のワークショップ(近藤,2007)などアートや身体表現などを用いた研究が進められてきた。一方で、アート や身体表現を「用いた」実践の報告にとどまる場合も多く、それらをいかに研究として位置づけるのか、また環境社会学が扱ってきた合意形成やガバナンスの議論といかに接続しうるのかについては、評価方法や公共性、「翻訳」といった課題を含め、議論の余地がある。
また、アートの持つ解釈の多様性は、読み取り手によって解釈の幅を持たせられるため、暫定的に合意しながらも別の可能性を孕む点で、環境社会学が志向してきた順応的ガバナンスと整合的である。しかし、その解釈を社会に開く過程においては、「トランスレーター的な役割」が不可欠になり、その実践的、倫理的課題があらためて問われることになる。
この研究例会では、教育学分野では理論的な蓄積が進むアートベース・リサーチについて、従来からアート的手法を用いてきた環境社会学の立場から、その接続可能性や課題を検討したい。教科書的なハンドブックである『アートベース・リサーチ・ハンドブック』(Leavy, Patricia ed., 2017)と『アートベース・リサーチの可能性』(小松,2023)を4回のシリーズで輪読することを通じて、入門としてのアートベース・リサーチをともに学ぶとともに、出発点として理論的枠組みが環境社会学に対してどのような示唆をもたらすのかを考え、議論していく。
(引用文献)
・嘉田由紀子(1997)「生活実践からつむぎ出される重層的所有観―余呉湖周辺の共有資源の利用と所有―」『環境社会学研究』3: 72-85.
・小坂育子(2007)「見えなくなった身近な水環境を見えるようにする社会的仕組みの試み―三世代交流型水害調査研究への展開」『環境社会学研究』13: 71-77.
・近藤隆二郎(2007)「市民調査から市民計画へ」『環境社会学研究』13: 48-70.
・富田涼都(2025)「私たちはどんな自然をまもろうとするのか―未来の人と自然の関わりをどうやって考えるか」福永真弓・松村正治編『シリーズ環境社会学講座4 答えのない人と自然のあいだ―「自然保護」以後の環境社会学』新泉社.
※ 研究例会への参加にあたっては、以下の文献のご一読をおすすめしますが、読まなくても議論できるよう冒頭に概要を解説する予定です。
Leavy, Patricia ed., 2017, Handbook of Arts-Based Research, First Edition, New York: Guilford Press.(岸磨貴子・川島裕子・荒川歩・三代純平監訳,2024,『アートベース・リサーチ・ハンドブック』福村出版.)
https://www.fukumura.co.jp/book/b652017.html
小松佳代子編, 2023, 『アートベース・リサーチの可能性―制作・研究・教育をつなぐ』勁草書房.
https://www.keisoshobo.co.jp/book/b632569.html
開催概要
◇日時:【第1回】2026年5月15日(金)【第2回】2026年6月19日(金)【第3回】2026年7月10日(金)【第4回】2026年8月7日(金) いずれも12:00~13:30
◇開催方法:オンライン(Zoomミーティング)
◇対象:環境社会学会会員、学生、一般
◇参加費:無料
◇参加申込:5月14日(木)17:00までに、以下の申込フォームからご登録ください。参加を申し込まれた方に、参加方法の詳細をメールでお知らせします。単発での参加の場合もフォームよりお申し込みください。
内容
指定した内容を基にディスカッションを行います(各回90分)。
【第1回】アートベース・リサーチの系譜と理論的背景
▼『アートベース・リサーチの可能性』
第1部 ABRの理論的展開(小松佳代子)
第1章 ABRの由来/第2章 ABRの特徴/第3章 ABRの課題
【第2回】ABRの事例
▼『アートベース・リサーチ・ハンドブック』
第Ⅱ部 文学のジャンル
第8章 ナラティブによる探究/第9章 オートエスノグラフィーのアート/第10章 創造的ノンフィクション(CNF)との出会い/第11章 小説に基づく研究/第12章 詩的探究
第Ⅲ部 パフォーマンスのジャンル
第13章 新しい調性でのa/r/tographicな探究/第14章 生きること、動くこと、そして踊ること/第15章 エスノドラマとエスノシアター/第16章 演出家/俳優/研究者/教師によるプレイビルディングの技法と雰囲気
第Ⅳ部 ビジュアルアート
第17章 アートベース・ビジュアル・リサーチ/第18章 ドローイングと絵画リサーチ/第19章 アートベース・リサーチとしてのコラージュ/第20章 インスタレーション・アート/第21章 学術的なコミックの描き方
第Ⅴ部 映像アート
第22章 研究としての映画/映画としての研究/第23章 エスノシネマとビデオベースの研究
第Ⅵ部 ミックスメソッドとチームアプローチ
第24章 海のモンスターたちがビーチを征服する―教育資源としてのコミュニティアート:ある「海洋ゴミ」プロジェクト/第25章 混合型アートベース・リサーチ
【第3回】留意点:実践化における評価、倫理的課題、公共性
▼『アートベース・リサーチ・ハンドブック』
第Ⅷ部 留意点
第31章 アートベース・リサーチを評価するための規準/第32章 アートベース・リサーチにおける翻訳/第33章 アートに基づくライティング/第34章 アート、エージェンシー、そして研究倫理―ニューマテリアリズムはいかにアートベース・リサーチを必要とし、変容させるか/第35章 教育方法としての美に基づく研究―「知っていること」と「未知であること」の相互作用で「見ること」を拡張する/第36章 実験的なテクスト出版の際の語用論/第37章 公共にひらく―エスノグラフィ
【第4回】「翻訳者」の役割
▼『アートベース・リサーチの可能性』
第3部 芸術的知性による教育の可能性
第8章 R・アルンハイムから紐解く「目で考える」ということ(石黒芙美代)/第9章 美術と美術教育の分断を超えるために(南雲まき)/第10章 <驚くべき出来事>に見るパラダイム転換と芸術的知性(竹丸草子)
◇企画・進行(4回とも)
富田 涼都(研究活動委員/静岡大学)
紀平 真理子(研究活動委員/名古屋大学)
◇主催:環境社会学会
◇問い合わせ先:研究活動委員会 紀平真理子
E-mail:kihira.mariko.k3[at]f.mail.nagoya-u.ac.jp *[at]を@に変えて送信してください
(研究活動委員会)



