修論・博論発表会を2026年3月7日(土)に開催いたします。本発表会は環境社会学分野の研究に取り組む大学院生の出会いや交流の場として、また、さらなる研究の進展に向けた情報・意見交換の場として役立てていただくための場です。会員・非会員を問わずご参加いただけます。みなさまのご参加を心よりお待ちしております。
環境社会学会特別例会 修士論文・博士論文発表会
開催概要
- 日時:2026年3月7日(土)13:00~17:55(予定)
- 場所:場所:立教大学池袋キャンパス 14号館D302
https://www.rikkyo.ac.jp/access/ikebukuro/ - 参加方法:対面
・本年度は対面で開催します。参加者(非会員含む)は、上記会場までお越しください(参加費無料)。
・配付資料がある場合は、メールマガジン第641号(臨時号)掲載のGoogle Driveにアップロードします。当日12:30頃から閉会までアクセス可能です。 - zoom参加の場合
・補助的にZoom配信を行います。
・会員のみなさま:メールマガジン第641号(臨時号)掲載の参加用URLをご確認ください。
・非会員のみなさま:3月6日12時までに下記ボタンよりお申し込みください。参加用URLは同日17時以降にお送りします。
・発言時以外には、マイクをオフにしたままでお願いします。
・質問などの際には、可能なかぎりカメラをオンにお願いします。
・配布資料などがある場合は、当日チャットで配信します。
タイムテーブル
・発表数が多いため、修士30分(報告20分+質疑応答10分)、博士40分(報告25分+質疑応答15分)とします。
13:00 開会
13:00〜13:30 第1報告+質疑応答[修論]
「繊維産地における地域ブランドの官民協働手法の提案と妥当性評価」藤井悠宇(慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 システムデザイン・マネジメント専攻)
13:30-14:00 第2報告+質疑応答[修論]
「環境政策により変転する製造業の自家水力発電所の位置づけ―契機としての大気汚染物質と二酸化炭素のbads認定―」田中亮悟(明治大学大学院 政治経済学研究科 経済学専攻)
14:00-14:30 第3報告+質疑応答[修論]
「上根来集落の歴史と共同―なぜ無住集落で活動を続けるのか―」白木達也(北海道大学文学院 人間科学専攻 地域科学研究室)
14:30-14:40 休憩(10分)
14:40-15:10 第4報告+質疑応答[修論]
「太陽光発電事業の社会的受容性―長野県内自治体の応答にみる『推進』と『規制』の複雑性―」杉本陽太(信州大学大学院 総合人文社会科学研究科)
15:10-15:40 第5報告+質疑応答[修論]
「慢性砒素中毒による被害の不可視化―中国湖南省石門県鶴山村を事例として―」李禕然(北海道大学 文学院 人間科学専攻 地域科学研究室)
15:40-15:45 休憩(5分)
15:45-16:25 第6報告+質疑応答[博論]
「社会課題解決を目指す学際的な共同研究の内部者によるラボラトリー・スタディーズ―学問分野の垣根を越えた融合とは何か?―」片岡良美(北海道大学 技術連携統括本部/大学院工学研究院・技術専門職員)
16:25-17:05 第7報告+質疑応答[博論]
「現代インドネシアにおけるイスラーム環境運動の展開」中鉢夏輝(京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究研究科 グローバル地域研究専攻)
17:05-17:15 休憩(10分)
17:15-17:55 第8報告+質疑応答[博論]
「ベトナム・メコンデルタの塩水侵入地域に適応する生業体系の構築―多方向の人的つながりが作る稲・エビシステム―」皆木香渚子(京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究研究科)
17:55 閉会(予定)
要旨
[修論]繊維産地における地域ブランドの官民協働手法の提案と妥当性評価(藤井悠宇)
人口減少と国内市場の成熟が進む中、繊維産地では地域の価値を再定義し外部との関係を結び直す「地域ブランド」の構築が課題となっている。その推進には行政と事業者の協働が不可欠だが、発展期には行政が重視する公益・説明責任と事業者が重視する採算・競争優位の間で目的階層の不一致が顕在化し、協働が停滞しやすい。本研究は、広島県福山市の備後繊維産地を実証地として、この不一致を対話の場で扱えるようにする6フェーズの協働手法を提案した。境界対象の言語化により暗黙知と形式知の非対称性を橋渡しし、差異の可視化・親和図法・価値基準の抽象化を経て、合意形態を芯・条件付き合意・委任へ複線化することで、完全合意依存を回避す る設計とした。福山市でのワークショップにおける事前・事後調査(N=8)の結果、包摂性や共通参照点など9評価因子すべてで有意な改善が確認された。本研究は、目的の不一致を固定的対立ではなく交渉可能な論点へ変換する方法体系を提示し、繊維産地に限らず多主体協働を要する地域ブランド運営への適用可能性を示した。
キーワード:地域ブランド、プレイス・ブランディング、協働ガバナンス、目的階層、整合、バウンダリーオブジェクト
[修論]環境政策により変転する製造業の自家水力発電所の位置づけ―契機としての大気汚染物質と二酸化炭素のbads認定―(田中亮悟)
本稿では環境経済学のbads(負の財)概念と‘anti-bads’(負性緩和財)概念を用い、日本の化学メーカーのデンカ株式会社およびアルミメーカーの日本軽金属株式会社における自家水力発電所の位置づけ(有用性)が、環境政策によりどのように変転してきたかを論じる。特に1970年前後の大気汚染対策期と20世紀末以降の脱炭素期に注目した。分析により、検討対象の企業が自家水力発電所を炭素排出に対する‘anti-bads’と認識している点を明らかにした。一方で、自家水力発電所に起因する流量の減少といったbads性を十分に減らせていない。そこで、水力発電所が立地する流域において、自治体、地域住民、他の水力 発電所を所有する企業を含めた会議体の組織化を提言する。これにより、負の影響の削減と水利権に関連する不確実性を減らすことができると考える。今後の課題は検討対象を他の企業や公営電気事業へ広げることである。
キーワード:水力発電所、社会的費用論、bads、大気汚染、脱炭素
[修論]上根来集落の歴史と共同―なぜ無住集落で活動を続けるのか―(白木達也)
本研究は、無住化した福井県小浜市上根来集落を対象に、住むことをやめた後も持続する「共同」の実践を、歴史の連続性の中から問い直すものである。無住集落を再生論や活性化の枠組みで捉えるのではなく、人びとの生活史と身体的実践に着目し、共同がいかに再編され続けてきたのかを明らかにした。特に生業、寺社のいとなみ、イエとムラの助け合い、無住化後の維持管理の実践を通して、上根来の共同は固定的制度ではなく、歴史を参照枠としながら欠けや変化を前提に組み替えられるプロセスであることを示す。そこでは将来像の共有ではなく、「どこまでを自ら引き受けるのか」という問いを各自が担い続ける姿勢が共同を支えている。
キーワード:無住集落、共同の再編、身体的実践、歴史的連続性、生活史
[修論]太陽光発電事業の社会的受容性―長野県内自治体の応答にみる「推進」と「規制」の複雑性―(杉本陽太)
本研究では、2050年カーボンニュートラルに向けた世界的潮流の中で、長野県内の自治体が直面する太陽光発電事業の「推進」と「規制」のジレンマに着目し、自治体間の規制条例の波及メカニズムと社会的受容性の関連を考察した。地上設置型設備のトラブルへの対応や自治体間の相互作用により、規制手法が周辺へ強化・波及していく「規制ドミノ」の実態を明らかにした。この現象はトラブルの有無にかかわらず、近隣自治体の動向に影響を受け、予防的措置として強力な規制条例が広域的に伝播していることが判明した。これは既往研究における社会的受容性の枠組みに対し、自治体間の相互作用が介在していることを示唆する。また、「規制ドミノ」の影響を受けない自治体の分析を通じ、対症療法的な規制強化ではなく、根本原因を解消する「土地利用政策(ゾーニング)」の確立と、地域主導型事業による「コミュニティ的受容性」の醸成が、本来目指すべき「脱炭素ドミノ」への転換に有効であると結論付けた。
キーワード:社会的受容性、再生可能エネルギー、太陽光発電、長野県
[修論]慢性砒素中毒による被害の不可視化―中国湖南省石門県鶴山村を事例として―(李禕然)
本研究は中国湖南省石門県鶴山村の雄黄工場による慢性砒素中毒事件を対象に、環境汚染による可視的な健康被害に留まらず、社会構造的に生じる「不可視化被害」の実態と要因を解明する。鶴山村の雄黄工場は約 60 年にわたる採掘・製錬で土壌・水質を深刻に汚染し、住民の慢性砒素中毒有病率が極めて高い状況となった。政府は事後的に廃棄物処理・水質治理・移住住宅整備などの対策を実施したが、補償金が低保制度に紛らわされた「毒保」の矛盾、移住住宅の権利不備、医療施策のジレンマなどが生じた。さらに補償金横領・選挙不正・異議申し立て者への不当弾圧といった派生的社会問題が発生し、被害者の声が抑圧される構造が形成された。飯島 の被害構造論や環境正義理論を活用し分析した結果、被害の不可視化は行政の不透明な対応や権力乱用によるもので、健康被害以外に生活基盤の崩壊・人格の損傷・地域記憶の消失といった多層的被害が長期化していることを明らかにした。また各ステークホルダーの役割を検証し、不可視被害への評価指標拡充や当事者の語りの記録・政策支援強化が今後の課題であると論じた。
キーワード:砒素中毒、被害の不可視化、環境汚染、中国湖南省、被害構造論
[博論]社会課題解決を目指す学際的な共同研究の内部者によるラボラトリー・スタディーズ―学問分野の垣根を越えた融合とは何か?―(片岡良美)
本論文は、社会課題解決を志向する学際的な共同研究において、異分野研究者間の協働や融合がいかに成立するのかを、内部者によるラボラトリー・スタディーズとして検討したものである。対象は報告者が参与した総合地球環境学研究所の「サニテーションプロジェクト」で、申請書・報告書等の文書分析、研究会合や合宿の記録分析、メンバーへのインタビューを通じ、期待やコンセプトの調整過程、概念図や集合的主語を用いた対話実践、学際的な協働を困難にする要因の一つと論じられてきた学問分野間の「文化差」のあらわれ方を分析した。さらに、共同研究者による振り返りとその分析を組み込む「メタ研究」に着目し、それが「学際性」をめぐる対話 をもたらす仕掛けとして機能し、プロジェクトの考え方や構造を見直し再設計するための知的資源となり得ることを示した。学際性を固定的に定義するのではなく、日常的実践や相互作用から生成される過程として捉え、省察を内在化した学際研究のあり方に対して実践的示唆を提供した。
キーワード:ラボラトリー・スタディーズ、学際性、異分野協働、異分野研究者間コミュニケーション、内部者研究
[博論]現代インドネシアにおけるイスラーム環境運動の展開(中鉢夏輝)
本研究は、現代インドネシアで展開するイスラーム環境運動について、これを支える環境倫理や環境保全活動の分析を通じて、運動の実態を解明しようとするものである。インドネシアでは、環境破壊が社会問題として浮上した1970年代以降、イスラームの教えに基づいた環境保全の取り組みが見られる。本研究では、現実社会における宗教的アプローチの意義を捉えるため、インドネシアでいかにしてイスラームが必要とされ、適用・改変されてきたのか、地域的文脈を踏まえた検討を試みた。具体的には、環境に関するイスラーム法学や法的裁定の理論的分析と、環境保全活動に関わるムスリム知識人・活動家や一般信徒等への聞き取り調査を通じて、運動 の展開を多角的に論じた。本研究を通じて明らかになるイスラーム環境運動の姿は、西洋的環境主義に合致した運動とも、教条的にイスラームを遵守・護持する運動とも異なる。それは、生態学的・社会的・経済的・精神的側面から責任と利益を説明するイスラームを用いて、多様な公益を実現しようとする人々の営為からなる運動である。
キーワード:イスラーム、インドネシア、環境運動、公益
[博論]ベトナム・メコンデルタの塩水侵入地域に適応する生業体系の構築―多方向の人的つながりが作る稲・エビシステム―(皆木香渚子)
世界のメガデルタは、食料安全保障において重要であるが、海面上昇や人為的な環境改変に伴う塩水侵入が農業生産の持続可能性における課題となっている。本研究では、ベトナム・メコンデルタを事例に、塩水侵入への適応過程で農家レベルで開始された生業「稲・エビシステム」に着目した。同システムが塩水侵入地域の生業として持続されてきたメカニズムを農法、人的ネットワーク、地域の農業史の観点から解明した。具体的には、水路の塩分濃度変化や降水分布、圃場の土壌塩分量の測定に加え、101世帯への半構造化インタビューと150日間の参与観察を行った。その結果、農家は海からの距離による水環境の特徴に応じた精緻な水管理を圃場ごと に行っていることが分かった。さらに、年間のシステム全体における経済性や効率を考慮し、エビ養殖と稲作の利益の比重を調整することで生計を向上させていた。稲・エビシステムは、自然環境への適応と技術導入を繰り返す歴史の中で、持続性を確保し、農家が能動的に構築した生業であると結論づけられた。
キーワード:生業体系、小農、塩水侵入、稲・エビシステム、ベトナム・メコンデルタ
お問い合わせ
栗原亘(東洋大学)
E-mail:kurihara031[at]toyo.jp
↑[at]を@に変換して送信してください
(研究活動委員会)



