本誌掲載の論文(自由投稿論文)、および特集論文、他の投稿原稿は以下の指針にしたがって査読しています。(2024年10月12日改訂)
『環境社会学研究』査読のてびき
1. 一般的指針
査読の基本的なねらいは、対象となる論文について、掲載が認められる水準を念頭において、問題点の改善を促すことにあります。執筆者当人の論旨をより明確に、説得力のあるものにすることが目的です。批判や反論自体を目的としたものではありません。学問観や方法論・価値観の相違をこえて、基本的には当人の論旨に沿って理解しようとする立場から、理解が困難だった点を中心に、論文全体を吟味・検討し、改善策を示唆してください。
査読者の役割は掲載の可否の決定ではありません。掲載の可否は、編集委員会が決定します。論文が内容的に一定の水準に達し、形式的にも不備がなく、それでもなお査読者側から重大な反論がある場合には、論文の掲載決定後に「レターズ」「書評論文」「研究ノート」欄などで、本誌の一般読者の立場から反論・批判してください。
コメントの執筆にあたっては、コメントされた側が十分理解できるか、具体的な修正の指針がつかめるか、などを考えてください。漠然とした印象による批判では論文の改善に役立ちません。なお、コメントの分量はA4で1枚程度を目安にします。
2. 査読の審査基準
査読の判定は、以下を目安とする。
判定 | 審査基準 | 備考(審査のポイント) |
A | このまま、ないし字句の微修正・補足だけで掲載は可能である | 投稿論文等の全体が、投稿されたままで掲載に値すると判断される(字句などの微修正を求めるだけのものもこれに含まれる)。 |
B | 修正が必要だか、基本的には掲載が可能である | 投稿論文等の一部に修正が必要と判断される箇所があるが、掲載可能な水準に達していると判断される。 |
C | 大幅な修正がなされれば、掲載の可能性がある | 投稿論文等に一部もしくは全体にかなりの修正が必要と判断される箇所があり、修正を経た出来具合が掲載の可否に大きく影響すると判断される。 |
D | 内容の根本的な検討が必要であり、掲載は難しい | 投稿論文等の一部もしくは全体に問題が有り、内容の再考のために相当の労力と時間を要することが見込まれるため、掲載は極めて難しいと判断される。 |
E | 題材・内容が本誌への掲載に適切でない | 投稿論文等の題材や内容が他の専門学会の領域のものであると判断される。 |
3. 評価のポイント
査読者は、以下のポイントについて、それぞれ「良い」「微修正の余地がある」「修正が必要」、および「非該当」のうちから評価を行い、修正点についてコメントする。
評価の項目 | 評価のポイント |
1. タイトル | ・論文のタイトルは、研究目的、研究内容と適合しているか。研究の特色を適切に表現しているか。 ・サブタイトルがある場合は、主題とのバランスは取れているか。 |
2. 課題設定の明確さ | ・設定された課題は、問題の背景や文脈を十分に踏まえたものか。 ・設定された課題は、その問題を論じる意義・価値を十分に表すものであるかどうか。 |
3. 結論の明確さ | ・設定した課題に対して、説得的に答えているか。 ・提示されている資料・データから、異なる結論が得られる余地はないか。 |
4. 節・項の構成の適切さ | ・もう少し書きこむべき節・項や簡略化できる節・項はないか ・前後を入れ替えた方がわかりやすくならないか |
5. 新規性の提示 | ・設定された課題や分析概念、あるいは分析結果にもとづく発見や考察が、先行研究との対比によって新たな学術的貢献に到達しているといえるかどうか |
6. 先行研究の理解 | ・研究テーマに関して、先行研究が的確かつ簡潔にレビューされているか。踏まえるべきものが踏まえられているか ・先行研究の読み方は適切か、理解は十分といえるか |
7. 事実確認・解釈の妥当性 | ・事実確認は十分か ・立論は十分な根拠に基づいているか ・一面的な解釈に陥っていないか |
8. 文章表現・用語の選定 | ・明晰達意な文章で表現されているか。 ・学会員一般にとってなじみにくい特殊な用語や表現が十分な説明なしに使われていることはないか ・訳語は適切か、誤字・脱字はないか |
9. 資料・データの取り扱い | ・資料・データの取得の方法と過程は十分に開示されているか。 ・資料・データを用いて記述する際に、また、主題に関連する問題や事例について記述する際に、匿名性、プライバシー、個人情報保護への配慮が十分になされているか。 |
10. 原稿の長さ | ・執筆要領に示された原稿の長さに収まっているか。 |
11. 要旨(和文/英文)の適切さ | ・本文の内容を適切かつ簡潔に述べられているか。その際、目的・方法・結果等が一目で分かるような記述になっているかどうか。 ・英文要旨は、和文要旨の的確な英訳になっているか。 |
12. 図表・写真の提示方法 | ・論文で使用されている図表や写真は適切なものか。 ・使用されている図表や写真に関して、本文中で必要かつ十分な説明がなされているか。説明と図表に整合性があるかどうか。 |
13. 注と文献引用の適切さ | ・注と文献引用について、ルールに沿って記述されているか。特に引用文献リストの文献表記及び並べ方がルールに則っているか。 |
4. 投稿者へのコメント
投稿者へのコメントは、「判定」と「評価のポイント」を背景に、審査者のコメントを投稿者に伝えるものである。コメントを記述する際の留意点は以下のとおりである。
- 論旨をどのように理解したか。
- 評価される点は何か、問題点は何か。とくに「評価のポイント」の各項目について、その項目を「微修正の余地がある」「修正が必要」と評価した場合は、それぞれ具体的にどの箇所(何ページ何行目)が、どういう理由で問題があり、どうすれば改善されるかを指摘すること。
- 誤字・脱字の類は、できるだけコメントのなかで指摘すること(数が多い場合は、その旨を指摘するにとどめることも可能である)。
5. 査読の流れ
以下、査読の基本的な流れを図示する。ただし、掲載の可否については、全ての投稿原稿について査読者の判定をもとに編集委員会にて個別に審議し、決定する。
* 2回目の査読を経てDD以外の評価だったもののうち、掲載に至らなかったものについては、修正のうえ、同じ査読者による3回目の査読に進むことができる。
6. 審査および書き直しの期間について
審査期間は、原則として第1回目、第2回目とも1ヶ月、書き直しの期間は、原則として1ヶ月を目安に編集委員会が設定する。
7. 査読結果の通知
査読結果(A,B,C,D,E)は、評価のポイント、及びコメントと合わせて執筆者に通知する。掲載の可否については、査読者の判定をもとに編集委員会で決定する。
機関誌への投稿に関するお問い合わせ
環境社会学会編集委員会事務局
山梨県立大学 箕浦一哉