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第1回環境社会学会奨励賞が以下の作品に授与される運びとなりました。2018年6月の大会(鞆の浦)総会では、受賞者に表彰状と副賞が送られる予定です。

受賞作品

金大宇著『中国ごみ問題の環境社会学——〈政策の論理〉と〈生活の論理〉の拮抗』昭和堂、2017年刊行

選考理由

選考委員会は、推薦委員・会員から推薦された作品のうち、本年度の受賞資格・選考対象の条件を満たす作品8点それぞれを詳細に検討し上位3点を選び出し、厳正な選考の結果、全員一致して、本作品を、第1回環境社会学会奨励賞受賞作品に選出した。

本作品は、現地での5年にわたる困難なフィールドワークにもとづいて、三輪自転車で住宅街を廻りながら再生資源の回収を行う「回収人(フィソウレン)」、ごみを集めて生計を立てる「拾荒人(スファンレン)」という、周縁に生きる人びとの生活に焦点をあてて、中国のごみ問題を考察した意欲作であり、大変な労作である。

廃棄物管理の制度に焦点をあて、政策論的な分析がほとんどを占めていたこれまでの中国のごみ問題研究に対して、本作品は、都市―農村という〈空間〉、〈アクター〉としての周縁に生きる人びとの生活に焦点をあてる、社会学ならではのボトムアップ的な視点の有効性を説得的に示し得ている。急速な近代化・経済成長の中で、境界が曖昧化する都市―農村関係、都市の外延的拡張、住民間の連帯の弱体化、「回収人」」「拾荒人」の出自と役割などが記述・分析され、都市周辺につくられる「ごみ山」、ごみ山に囲まれる都市・農村・その境界的な地域など、ごみ問題の中国的コンテキストと内実、制度と実態のズレ、そのズレがどのような多様な問題群を生み出しているのかが、生き生きとした文体で、迫力をもって活写されている。

環境問題と、都市―農村関係、農村戸籍、農民工などの、社会の構造的な問題を連結して考察するうえでも重要な一歩を踏み出しており、中国をフィールドとした環境社会学の新たな可能性を提起している。ごみ問題における中国的文脈での公論形成の可能性とそこにおける諸課題、論点を明確化し、「政策論」と「生活論」の接合をめざして、今後さらに研究を深めて欲しい。

第1回[2018年]環境社会学会奨励賞選考委員会委員長 長谷川公一