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修論・博論発表会を2023年3月13日にオンラインで開催いたします。非会員も発表可能ですのでふるってご参加ください。

環境社会学会特別例会 修論・博論発表会

開催概要

日時:2023年3月13日(月)13:00~17:30
会場:オンライン(Zoom)
※入室方法は会員用メールマガジン(529号)か、下記問い合わせ先までお知らせください。

問い合わせ・申込み先:廣本由香(福島大学)
hiromoto[at]ads.fukushima-u.ac.jp
↑[at]を@に変えて送信してください。

発表申し込みについて

申し込み方法(受付は終了しました)

発表者資格:2022年度修士課程修了予定者、博士課程修了予定者(非会員でも可)
申込み期間:2023年2月24日(金)~3月3日(金)

申込み内容:
上記の申込み先に下記の事項をすべて記載したメールをお送りください
(1)発表者氏名・所属
(2)連絡先(Eメール)
(3)論文のタイトル
(4)論文の要旨(400字程度、メール本文にベタ打ち)
(5)論文のキーワード(3~5語)

開催メッセージ

環境社会学会特別研究例会「修士論文・博士論文発表会」を下記のとおり開催いたします。会員の皆様には、報告が可能な方に本発表会への参加を勧めていただきますようお願い申し上げます。

2002年から続く環境社会学会主催の修士論文発表会は、環境社会学に関する修士論文の成果を発表者にご報告いただき、参加者とともに議論をより深めることができるようにと、長年開催されてきました。同分野の研究に取り組む大学院生の出会いや交流の場として、さらに博士課程進学後の研究テーマを展望する上での貴重な情報・意見交換の場として役立たせていただきたいと考えております。非会員の方でも発表することができますので、奮ってご参加ください。

今年度から修士論文とともに、博士論文の発表者募集もおこないます。修士論文・博士論文の指導をされている会員の方におかれましては、発表が可能である方の情報をお寄せくださいますようお願い申し上げます。その他、本発表会についてのご質問等があれば、下記の問い合わせ先にご連絡ください。

問い合わせ先:

廣本由香(福島大学)
hiromoto[at]ads.fukushima-u.ac.jp

発表プログラム・要旨

第1報告〈修論〉「外来種問題の倫理的側面――琵琶湖の外来魚問題からの考察」 小松右詩(龍谷大学政策学研究科)

琵琶湖の外来魚問題の事例について、環境プラグマティズムや順応的ガバナンスの議論を参考に、倫理的な視点から考察を行った。そして、今後の外来種対策において望まれる、倫理の文脈を考慮した政策のあり方についての論点整理と問題提起を試みた。滋賀県が一般市民に対して外来魚の再放流禁止を条例で義務付けたことで、一部の市民から反発があり大きな論争が起こった。この論争が起こった原因は、外来魚の存在を一切認めず、命の扱いや個体の尊厳といった倫理的配慮がなされなかったためだと考えられる。また現行の法律においても野生生物への倫理的配慮が明確に示されていない。今後の外来種対策において、個々人の多元的価値の併存を目指し対立を起こさないためには、生態学的な「種」と個人が五感でその存在を認識できる「個体」の扱いを明確に分ける必要がある。ステークホルダーごとの倫理の文脈に留意する、という視点が環境政策の新たな論点となり得るのではないか。

キーワード:外来種、琵琶湖、環境倫理、多元的価値、倫理の文脈依存性

第2報告〈修論〉 「近隣地域における中間空間の持続可能性:地域住民組織の共同活動を通じて」カン キンキョウ(弘前大学大学院地域共創科学研究科)

本稿では、高齢化・単身化の著しい弘前市仲町伝統的建造物群保存地区を対象に、雪国の生活課題である雪処理のあり方を考察した。雪処理をめぐってはこれまで、生活課題の共同処理を促す中間空間=流雪溝が注目されていたが、仲町地区は伝統的建造物群保存事業の一環で流雪溝が整備されたものの共同処理はなされていない。仲町地区と既存の町会の範囲が食い違い、流雪溝管理組合が結成されなかったためである。しかし、同地区に中間空間がまったくない訳ではない。伝統的建造物群指定の条件となっているサワラ生垣や黒塀である。しかも、伝統的建造物群指定にともなって設立された住民組織=仲町保存会が、これらの補修を住民で円滑に進められる共同活動を実施している。これらの補修が頻繁に必要になるのは道路除雪にともなう寄せ雪のためである。したがってサワラ生垣や黒塀の補修も雪処理の一種と言え、その意味では雪の共同処理が部分的に実現している。現在、町会単位の自主防災組織を通じた、独居高齢者の間口除雪支援が行われている。過去に分裂した町会が再統合すれば、町会を超えた保存会との一体的な運営や流雪溝の管理も展望できると、住民自身も考えはじめていた。

キーワード:中間空間、生活課題、住民組織

第3報告〈修論〉「「論争中の病」の経験の脱正統化と抵抗:化学物質過敏症患者に関する医療社会学的研究」 鄭世暻(東京大学社会学研究科)

本稿では生物医学的根拠が無く、疾患の原因や治療法に議論が続く「論争中の病」であり環境病でもある化学物質過敏症(以下、MCS)患者の経験について考察した。特に病状を否定される「脱正統化」経験と、それに「抵抗」する経験がどのようなものなのかについて聴き取り調査を行った。本稿ではまず、MCS患者が医師と周囲により実在しない病気を訴えると思われていること、これに対し患者は病状を「可視化」する戦略を立てていることを明らかにした。患者の「抵抗」は診断の前後で対象が変わり、医師に対する抵抗から社会に対する抵抗になっていた。診断された瞬間から化学物質に依存している社会と戦わざるをえない患者の抵抗は「環境保健運動」の性格を持つ。しかし、患者は症状の多様性と治療法の非一貫性で連帯が難しい状況に置かれており、社会に対する共闘が難しいことを確認した。

キーワード:化学物質過敏症、論争中の病、環境病、脱正統化、抵抗

第4報告〈修論〉「干拓地太陽光発電施設立地問題からみる干拓事業後の地域社会と将来構想―韓国沙内干拓地を事例に―」 金叙娟(東北大学文学研究科)

韓国の再生可能エネルギー導入を促進する政策の中で、その適地として、以前は干潟であったが、現在は主に農地として使われている干拓地が選ばれるようになった。これと関連する流れの中で、焦点化されない干拓地を抱える地域の姿があった。現在の干拓地太陽光発電施設をめぐる問題を理解するために、干拓事業後から今に至るまで、地域社会が抱える問題とともに、いくつかの取り組みを確認した。例えば、行政においての最低限の淡水湖水質基準をもって管理されている淡水湖は、衰退していく沿岸漁場を含めた地域社会においては、沿岸衰退のもっとも大きな原因として考えられていた。同時に、干拓事業後から現在に至るまでの地域社会で見られるミミズ採集の自主的な中止や、逆干拓を求める動きなど、地域の持続的な生活の維持のための住民たちの取り組みや思いをいくつか確認した。その中で、活発に推進されている干拓地太陽光発電施設とそれによって期待される地域活性化は、地域社会において重要とされる沿岸環境の改善、地域社会の持続を望む思いとは必ず合致しないことを述べた。

キーワード:再生可能エネルギー、干拓地、干潟

第5報告〈博論〉「ポスト「郷土中国」を生きる中国農民の主体性―生活論的アプローチから討究する「離土離郷不離農」―」 張曼青(大阪大学大学院人間科学研究科)

本論文では、「農業面源汚染」に対して既存研究の「主体」の不在という課題を克服するために、改めて生活論的アプローチから農民の主体性を再考していくことを主たる目的としている。具体的には、ポスト「郷土中国」の「離土離郷」の実情、及び「郷土中国」との連続性を念頭に置く。そして一時点の農民の処理行為あるいは施肥行為から考察するのではなく、かつて農業・農地に付き合ってきた歴史による蓄積された実践知、行為や選択の背後で言い表せない葛藤など、行為の奥にある過去に記憶されている時間の蓄積という経験のレベルまで踏み込んで、農民に維持されてきた「農」の一面に着目した。特に内陸の農民の経験知と「文字」に依拠した科学的な判断基準や「標準語」とのギャップを乗り越えるために、方言から掘り下げて、マイナー化している有機的な伝統農法の詳細をあぶり出すことができた。それを踏まえつつ、畜産廃棄物の処理及び農民の施肥における経験知の継承、農民の主体性が政策や社会情勢に応じて変化していく「主体性の可変性」といった様態を明らかにし、ポスト郷土中国ならではの「農」を再考した。

キーワード:中国農業、農民の主体性、生活論、農業と農、方言