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修論・博論発表会を2024年3月12日にオンラインで開催いたします。非会員も発表可能ですのでふるってご参加ください。

環境社会学会特別例会 修論・博論発表会

2023年度環境社会学会特別研究例会「修士論文・博士論文発表会」を下記のとおり開催いたします。本年度は修士論文2件、博士2件の報告が揃っております。会員の皆様にはぜひともご参加いただき、活発な意見交換の場とさせていただきたく存じます。

開催概要

日時:2024年3月12日(火)13:00~16:30
会場:オンライン(Zoom)
参加申し込み方法
下記の参加申し込みフォームより、3月10日(日)23:00までに登録をお願いいたします。開催前日までにzoomのURLの情報をお知らせします。

参加申し込み

プログラム

13:00 開会
13:00〜13:05 趣旨説明
13:05~13:45 第1報告〈修論〉
「有機農業の展開過程と地域社会:『有機給食』を巡るシンボリックな意味構築とネットワーク形成をめぐって」
坂井和夏菜(名古屋大学大学院環境学研究科)
13:45~14:25 第2報告〈修論〉
「自然資源管理の集約めぐるレジティマシー:アンダーユース問題の解決にむけて」
清水勇輔(名古屋大学大学院環境学研究科)
14:25~14:45 休憩20分
14:45~15:35 第3報告〈博論〉
「ラオス山村における生存基盤研究:日常と非日常の世帯間ネットワーク」福島直樹(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
15:35~16:25 第4報告〈博論)
「鉱山経営に伴う環境汚染と健康被害の不可視化の条件に関する研究」匂坂宏枝(宇都宮大学国際学研究科)
16:30ごろ 閉会

要旨

第一報告:有機農業の展開過程と地域社会:『有機給食』を巡るシンボリックな意味構築と ネットワーク形成をめぐって(坂井和夏菜)

本研究では、愛知県東郷町の有機給食の取り組みについて、展開過程を分析した。特に、「有機給食」という新たなシンボル構造の構築と、意味づけが多様なアクターの動員・ネットワーク形成との関係性に着目し、調査を行った。
東郷町行政において「有機給食」は、「給食」における「子ども」の「安全・安心」に結びつけられて登場し、シンボル構造が確立されていった。しかし「有機」と「給食」が結びついてできた「有機給食」のもとでは、立場の違いによるアクター間の対立も顕在化した。対立解消に向けては、「子ども」というシンボル構造の共有と、「有機」農家と「給食」に携わるアクターの間で、異なる論理を理解した上での歩み寄りが行われた。すなわち、「有機給食」という新たなシンボル構造が確立されたことで、従来交わらなかった多様な人々の参入が可能となり、対立とその解消を経て、「有機給食」に関わるアクター間の新たなネットワークが成立・機能したのである。
キーワード:有機農業、有機給食、地域社会、シンボル、ネットワーク形成

第二報告:自然資源管理の集約めぐるレジティマシー:アンダーユース問題の解決にむけて(清水勇輔)

本稿の目的は、岡山県西粟倉村の百年の森林事業をめぐる森林所有者の意向を規定する要因を明らかにし、自然資源のアンダーユース問題の解決にむけた資源管理の集約制度の論点を示すことである。
提示された論点は2つある。第一に、資源所有者が資源管理の集約制度の普及に協力するさい、施業報酬だけでなく、事業者が道徳的なレジティマシーの観点から信頼に足るかも重要だった。
つまり、事業の情報公開性や資金繰りの透明性などを確保する制度設計が求められる。
第二に、資源管理の集約制度の普及は従来の資源管理制度の再編を意味する。それゆえ、両制度をめぐる認知的なレジティマシーの対立をいかに低減・解消するか課題である。
本稿の知見は3つある。第一に、資源の生産機能をふくめた多面的機能の発揮をめざす資源管理制度の普及メカニズムの解明に寄与した。第二に、資源管理をめぐる公的セクターの役割を再検討した。第三に、地域住民を中心とした資源管理制度にたいする問題提起をおこなった。
キーワード:アンダーユース、コモンズ、資源管理の集約制度、レジティマシー

第三報告:ラオス山村における生存基盤研究:日常と非日常の世帯間ネットワーク(福島直樹)

本研究は、ネットワーク分析の視点や手法を参照しつつ、市場、社会インフラ、行政サービスから恩恵を受けることの小さいラオス山村の人々が、どのような資源を利用し、みずからの生存の維持に努めているかを明らかにする研究である。本報告では、世帯間における生活用具、精米機、労働力、米、住居の貸借にみられるネットワークの利用に着目し、定量分析をおこなった。その結果、生活を維持するための基盤として世帯間ネットワークが一定の役割を果たすこと、さらには日常的に利用されないネットワークが非日常の生活場面に利用されることを明らかにした。ネットワーク利用では世帯間に大きな格差がみられた。このネットワーク弱者を生む要因として、主に経済的局面、子供の数、家族周期との相関が認められた。
キーワード:ラオス、山村、生存基盤、ネットワーク、モン(Hmong)

第四報告:鉱山経営に伴う環境汚染と健康被害の不可視化の条件に関する研究(匂坂宏枝)

古来より鉱山の内部、局地、広域において鉱山由来の有害物質が住民の健康被害を発生させた。古河が経営した足尾銅山では鉱山局地での煙害による健康被害は不可視化され、久根鉱山では元鉱夫がじん肺に罹患していても法律で救済されなかった事例があった。本論では、その鉱山局地の健康被害を誰がどのように不可視化させたのか、さらに鉱山局地とはどのような性質を持つ場所なのかを分析考察し、鉱山局地で健康被害が救済されない構造を明らかにすることを目的とした。
そして鉱山局地と鉱山内部で発生したいくつかの健康被害の事例を、環境政治学と環境社会学の概念を用い分析した。その結果、企業が本来受苦圏である鉱山山元を疑似受益圏化したこと、その上で鉱山局地における健康被害の不可視化には3ケースあることを析出した。加えて受益圏では、受苦圏及び疑似受益圏に無関心であり続け、受苦を鉱山局地に閉じ込め、被害の不可視化を助長、強化したことが明らかとなった。
キーワード:足尾銅山、受益圏・受苦圏、疑似受益圏、政策プロセス、不可視化

お問い合わせ

研究活動委員・谷川彩月(人間環境大学)
s-tanikawa[at]uhe.ac.jp
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