環境社会学会は、2022年7月28日(木)「B Corp Movement を考える研究例会」を開催します。
B Corp Movement を考える研究例会
趣旨
環境社会学に限らず、長年にわたって「企業は負の環境影響を生み出す主体」として捉えられ、いかにして環境負荷を低減し、外部性を内部化するかという規制の対象として研究されてきた。かつては環境対策の選択肢が限定的な中で、CSRなどのアプローチも交えながら、企業は規制の枠内で基準を満たすように努力することが合理的な基本戦略となっていた。しかし、取り組みが必ずしも環境負荷を低減していないこともあり、環境NGOや消費者団体から「グリーンウォッシュ」批判が展開されてきた。
そして、近年、気象の激甚化や自然災害などの気候変動リスクが顕在化するようになったことから、グローバル金融からも気候変動対策促進の圧力が強まり、企業の環境対策が問われる状況がますます強まっている。
他方、再生可能エネルギーを代表として、この十数年にわたるテクノロジーの急速な発展により、対策の選択肢が増えてきたこともあり、より積極的な取り組みを展開する企業も増えつつある。例えば、「RE100」は、グローバルに事業を展開する企業がサプライチェーンも含めてビジネス運営にかかるエネルギーを100%再生可能エネルギーで供給するイニシアティブであり、参加企業は実際にエネルギー由来のCO2排出を減らしながら、製品やサービスの提供をおこなっている。ここには従来の「負の環境影響を生み出す主体」というよりは、「(経済性と両立させながら)積極的に負の環境影響を低減させる主体」としての企業像を見出すことができる。
さらに、環境に留まらず、SDGs や MeToo Movement、Black Lives Matter Movement などの社会運動を通じて、企業を取り巻く外部/内部環境は大きく変化しつつある。これに対し、戸惑いながらも環境と社会にポジティブな影響を生み出そうと試みる企業も現れつつある。その代表的な動きとして B Corp Movement が挙げられる。
2007年に米国の非営利団体B Lab がはじめた B Corp 認証は、端的に言えば、厳格な評価システムのもとで「良い企業」を認証するものである。「ガバナンス」「ワーカー」「コミュニティ」「環境」「カスタマー」の5つのカテゴリについて、企業の実践とアウトプットを問い、評価し、認証する。これまで世界中で5,000社以上が B Corp 認証を取得し、「株主資本主義」から「ステークホルダー資本主義」への転換を推し進めている。
この研究例会では、日本では萌芽期にある B Corp Movement について、そもそも B Corp とは何なのか、それが環境と社会の何を変えるのか、企業が認証を実践する際にどのような便益と課題があるのか、B Corp 同士が生み出す協働のシナジーにはどのような可能性があるのかなど、さまざまな論点を探索する。そうした議論を踏まえた上で、環境社会学が「環境と社会にポジティブな影響を生み出す主体」としての企業のあり方を、どのように研究・実践する可能性があるのかを考える。
※ 研究例会への参加にあたっては、B Corp ハンドブックの翻訳書が基本的事項を網羅しているため、ご一読をおすすめします。
ライアン・ハニーマン&ティファニー・ジャナ(著)、鳥居希、矢代真也、若林恵(監修・編集)、B Corp ハンドブック翻訳ゼミ(翻訳)(2022)『B Corpハンドブック よいビジネスの計測・実践・改善』バリューブックス・パブリッシング.
開催概要
日時:2022年7月28日(木)15:00 ~ 17:00
会場:オンライン(Zoom ミーティング)
参加費:無料
申込:フォームよりお申し込みください(申込締切 7月27日(水))
※ 参加を申し込まれた方に、参加方法の詳細をメールでお知らせします。