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メールマガジン第449号(2020/8/15)でお知らせいたしましたように、2020年12月に開催する第62回環境社会学会大会は、新型コロナウィルス感染拡大が継続している社会状況に鑑み、オンライン開催とさせていただきます。(研究活動委員会)

【日程】2020年12月6日(日)
【開催方法】オンライン開催
【参加費】無料
【大会スケジュール】
午前 自由報告
午後 シンポジウム
※詳細な時間は自由報告募集の締切後にご案内いたします。

【シンポジウム】グローバル・コモディティの環境社会学
日本の食料自給率はカロリーベースで37%、木材自給率は37%と低い(2018年度統計)。第一次産業は衰退し、多くの農山漁村で人口減少が加速している。二次的自然は荒廃し、その再生に取り組まれている。また、エネルギー自給率にいたってはわずか12%で、再生可能エネルギーの開発など新たな資源活用が試みられている。
一方、日本の低自給率は、資源・商品の輸入・消費と結びつくため、海外の資源開発と表裏一帯の関係にある。とりわけ、豊かな自然資源を有する途上国では、輸出用の資源・商品の開発・生産によって深刻な環境・社会問題が引き起こされていることが多い。このように日本の資源をめぐる環境・社会の課題と途上国の環境・社会問題は、資源・商品の生産・消費を通して関連していることが少なくないにもかかわらず、これまでの環境社会学はそれらを個別に研究してきたように思われる。以上のような問題意識から、グローバル・コモディティ(国際的に交易される資源・商品)に注目し、その生産と消費の関係性の中から環境・社会問題を捉え、その解決策を検討するシンポジウム「グローバル・コモディティの環境社会学」を企画することにした。SDGsの目標に「つくる責任つかう責任」が掲げられているように、このようなアプローチは今後重要になってくると考えられる。
具体的に、本シンポジウムはグローバル・コモディティの生産と消費の中で生じる環境・社会問題を統一的に捉える方法についての報告と、このような環境・社会問題の解決策として考えられる国際資源管理認証制度とフェアトレードの事例に関する報告から構成されている。事例対象地は、グローバル・コモディティを通した経済的なつながりが強い日本(消費側)と東南アジア諸国(生産側)を主に取り上げる。
国際資源管理認証制度とフェアトレードの取り組みでは、生産地域の資源利用・保全に生産者以外の新たなアクター(商社、NGO、消費者など)が国境を越えて関与することになり、新たな交渉が生まれ、新たな協働・連帯が試みられることになる。これらは環境社会学の研究領域であって、環境社会学が培ってきた理論と実践知が生かされるべきであろう。しかし、途上国の農村地域には地域特有の経済論理や合意形成の仕組みが存在する可能性があり、日本の事例研究を中心に深められてきたこの分野の理論と実践知がどこまで通用するのか注意深く検討する必要がある。
本シンポジウムが「グローバル・コモディティの環境社会学」という新たな分野の可能性を探る機会になると同時に、関連する既存の環境社会学の理論と実践知を相対化し、議論を活性化するきっかけになることを期待している。(担当委員 寺内大左)