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環境社会学会は、2022年6月11〜12日に第65回大会をオンラインにて開催します。(2022年6月1日:参加申込・プログラムを公開)

プログラム・要旨集(PDF)

概要

  • 日程:2022年6月11日(土)〜12日(日)
  • 開催方法:オンライン開催
  • 参加費:無料

大会スケジュール

6月11日(土)

9:00~12:30 自由報告
13:30~16:00 企画セッション1「停滞期の環境NPO・ボランティア――その捉え方と打開策」
16:00~18:00 総会

6月12日(日)

9:00~11:30  企画セッション2「気候変動対策における研究と実践ー再生可能エネルギー事業の適地抽出における可能性」
12:30~15:00  企画セッション3「環境社会学と障害学の交差点―『胎児性水俣病患者たちはどう生きていくか』を出発点として―」
15:00~17:30  企画セッション4「核兵器・原発による環境危機の中で舩橋晴俊氏の環境制御システム論の遺産をどう受け継ぐか」

参加申し込み

以下のフォームから参加申し込みを受け付けます(非会員の方も参加可能です)。※グーグル・フォームが開きます。

参加申込(終了しました)

参加申し込み締め切りは【6月7日(火)】です。

※自由報告・実践報告や企画セッションにおいて報告登録をした方々も、こちらから参加登録をお願いします。

※申し込みいただいた方に、ZoomのミーティングIDとパスワードを大会直前にお知らせいたします。

託児について

2018年6月の総会で決定した学会の託児補助金を活用することができます。

  1. 託児補助金として、お子さん1名につき1大会1万円を支給します。利用者2名以降は50%(5000 円/人)の支給とします。
  2. 補助金の支給は、信憑書類の提示と引き換えに、利用者の口座に
    大会後振り込みます。
  3. 支給の対象となる託児利用は、大会開催地周辺でも、利用者の自宅周辺でも広く認めています。

ご利用される方は6月11-12日の大会当日までに学会事務局 office[at]jaes.jp ([at]→@に変えて送信してください。)にご連絡ください。

お問い合わせ(大会全体について)

大門信也 sdaimon[at]kansai-u.ac.jp
寺内大左 aa087095[at]gmail.com
西城戸誠 nishikido[at]waseda.jp

大会プログラム

自由報告(11日9時~)

  1. 環境ガバナンスによる時間の組み直し――岩木川ヨシ原での火入れ再開プロセスから
    寺林暁良(北星学園大学)
  2. ナラ枯れ対策としての小面積皆伐更新実施のためのエートスの転換
    倉本宣(明治大学)
  3. 外来種の環境アイコン化―宮城県JAみやぎ登米管内でのカブトエビ発生を事例として―
    谷川彩月(人間環境大学)
  4. 居住地域と放射線の情報収集行動および健康不安についての一考察–福島県内・県外での放射線の知識・経験・情報収集行動の観点から–
    松村悠子(大阪大学大学院人間科学研究科)
  5. 「リスクコミュニケーション型まちづくり」デザインと「ナッジ」の役割―東京・三鷹市を事例に―
    中山敬太 (早稲田大学社会科学総合学術院)
  6. ポストコロニアル文学におけるスタンドポイントと批判的再帰性-アイヌの漫画キャラクターと自然を通した考察-
    山口賢一(沖縄県立看護大学)

企画セッション1「停滞期の環境NPO・ボランティア――その捉え方と打開策」(11日13時30分~)

企画者:藤田研二郎(農林中金総合研究所・研究活動委員)

「ボランティア元年」とも呼ばれた阪神・淡路大震災以降の市民活動の高まりのなか、1998年に「特定非営利活動促進法(NPO法)」が制定されてから、およそ四半世紀が経とうとしている。その間、環境分野では「環境NPO」や「環境ボランティア」といった言葉が定着し、環境政策形成・実施過程でも、それらの参加が積極的に位置づけられるようになってきた。

一方で、活動が長期化するなかでは、どんな団体も常に活発な状態であり続けることはできず、多かれ少なかれ活動の停滞を経験している。例えば、慢性的な資金不足、人材不足から、専従職員を雇用できない、世代交代ができないといった課題は、指摘されてすでに久しく、今なお重大な問題であり続けている。これまで数多くのNPOが設立されてきたが、今日では休眠状態になっているという団体も少なくないだろう。先行研究で優良事例として取り上げられていた団体が、活動を停止してしまっているという事態も、もはや想像に難くない。

市民活動の高まりから四半世紀を経た今日、上記のような活動の停滞は、単に個々の団体の浮き沈みというばかりではなく、環境NPO・ボランティアセクター全体に及ぶ問題となりつつあるようにみえる。とくに2010年代以降は、一般社団法人など従来のNPO法人に並ぶ法人格が普及し、あるいは新たに「社会的企業」や「ソーシャル・ビジネス」といった概念が注目されるなかで、かつてのようなNPO・ボランティアに対する期待は、薄れてしまったかのように思える。
こうした状況は、当初環境運動論で期待されていた、行政や企業とも対等に協働するような運動の姿、それを通じて体制内部からオルタナティブを提起するような変革のイメージ(長谷川 2003)とは、異なる。また、そうした期待に対する一定のカウンターとなってきた、環境運動の制度化(寺田 1998)とも状況を異にする。制度化論では、フォーマルな組織基盤を確立した運動体の体制編入効果が問題化されていたが、今日の状況は組織基盤の確立によるものとは捉えがたく、むしろ別の形で環境NPO・ボランティアの活動が行き詰まりをみせているようにも思われる。

今日の環境NPO・ボランティアの状況は、どのように捉えられるのだろうか。もし停滞期にあるとすれば、その要因とは何であり、どのように打開することができるのか。また他の分野と比較したとき、この要因・打開策にはどのような違いがあり、環境分野におけるNPO・ボランティアの特徴とは何か。

以上のような問題意識のもと、環境NPO・ボランティアの停滞をテーマとするセッションを企画する。それを通じて、環境NPO・ボランティアの現状、これまでの成果と課題を議論するための土台をつくるとともに、今後の環境NPO・ボランティア(研究)のあり方を展望するうえでの示唆を得たい。

なお本セッションは、環境NPO・ボランティアに関する研究と実践の対話を、主要な目的の一つとしている。そのため、既存の環境社会学上の位置づけに拘泥せず、幅広く環境NPO・ボランティアの実践にかかわる論点を扱いたい。また「停滞」という見方も、環境NPO・ボランティアの現状を捉えるにあたっての仮説の一つにすぎない。本セッションでは、そうした見方の適否も含めて活発な議論を期待したい。

司会 青木 聡子(名古屋大学)

  1. 企画趣旨説明
  2. 環境NGOの停滞と活動資金
    藤田 研二郎(農林中金総合研究所)
  3. 森林ボランティア活動の「停滞」をめぐる議論の様相
    富井 久義(社会構想大学院大学)
  4. 里地里山問題研究所(さともん)の活動について
    鈴木 克哉(NPO法人里地里山問題研究所)

コメント:宮永 健太郎(京都産業大学)

企画セッション2「気候変動対策における研究と実践ー再生可能エネルギー事業の適地抽出における可能性」(12日9時~)

企画者:丸山康司(名古屋大学)

気候変動問題への危機感を背景として再生可能エネルギーの利用拡大が進められつつある。その一方でかねてより指摘されてきた立地地域での合意形成が課題となる例も増えており、地方自治体の警戒的な施策も増えている。

この課題の難しさは場所をめぐる社会的文脈の多様性とそれに伴う固有性である。このため〈被害〉は社会的構成され、同程度の影響であってもステークホルダーの反応が真逆になることもある。国レベルでの一律の規制も機能しにくい。

このような状況に対応すべく個別事業を対象とした事業アセスメントではなく地域ごとに適地を予め合意するゾーニング(適地抽出)の施策が進められようとしている。日本でも2021年5月に改正された地球温暖化対策の推進に関する法律に基づいて促進区域をボトムアップで設定する取り組みが支援されるようになった。この施策には気候変動対策としての意義もあるが、環境問題の解決におけるトレードオフへの合意形成に環境社会学がどう応えるかという課題への対応をせまるものでもある。

そこで本セッションでは秋田県にかほ市における実践例を紹介しながらゾーニングという手法について議論したい。気候変動問題における全体と個の緊張関係を解きほぐす手法としての可能性、市民調査の応用、熟議のためのコミュニケーションデザインといった多様な論点について議論したい。さらに今後の研究の可能性を示した上でゾーニングにおける環境社会学の学問的実践の可能性を明らかにしたい。

  1. 主旨説明及び対象事業の概要
    丸山康司(名古屋大学)
    高橋潔(にかほ市)
  2. 風力発電ゾーニングにおけるコミュニケーション支援モデル
    田原敬一郎(科学コミュニケーション研究所)
    吉岡剛(東京大学)
  3. 再生可能エネルギーゾーニングにおけるコミュニケーションデザインとメディエーターの役割
    古屋将太(NPO法人環境エネルギー政策研究所)
  4. 地域における太陽光発電ゾーニング検討のための可視化ツールとワークショップ手法の開発の必要性
    山下紀明(NPO法人環境エネルギー政策研究所)

企画セッション3「環境社会学と障害学の交差点―『胎児性水俣病患者たちはどう生きていくか』を出発点として―」(12日12時30分~)

企画者:野澤淳史(東京経済大学・震災原発事故特別委員)

環境問題が民主主義への挑戦だとすれば、すなわち、それを制度および理念として掲げる国家が前提とするさまざまな境界線を越境していくという性質を帯びるものであるとすれば(Lidskog, 2009; Lidskog & Sundqvist, 2011)、水俣病問題が明るみにし、揺さぶりをかけるのは、環境と福祉の間に引かれた線である。その揺さぶりは、それぞれ、被害と障害をめぐる専門知の一つを構成する環境社会学と障害学にも及ぶ。本セッションは、野澤淳史『胎児性水俣病患者たちはどう生きていくか-〈被害と障害〉〈補償と福祉〉の間を問う』(2020,世織書房)への批評とその応答を出発点にして、環境社会学と障害学の研究者による越境的な討論を通じて、各々の学問体系を問い直すと同時に、双方の将来的な交差を見据えることを目的とする。

野澤(2020)では、それが医学的に証明されるまで脳性小児麻痺などと診断されてきた胎児性水俣病の患者を先天的な障害者として(も)位置づけている。制度的に見ても、その多くは患者手帳と障害者手帳を所持している。だが、「こんなからだにされた」ことの責任と賠償を求める運動の中で、胎児性患者たちが要求し続けた「自立生活」は議論されることが少なく、結果、その可能性は剥奪されてきた。被害補償における福祉という言葉の用いられ方には留意する必要があるが、胎児性患者たちに対する福祉的な支援が整備されるようになったのは関西水俣病最高裁判決(2004)以降である。

「日常の優生思想」という問題(第6章)は、胎児性患者たちの主張が運動的にも学問的にも積み残されてきたことの延長線上にある。端的に言えば、公害・環境運動が被害者と障害者の間に設けた傾斜的な関係である。原田正純は次のように言う。

環境によって健康が破壊されるようなことは犯罪ですよという話と、障害を持つと不幸ですよ、どうして不幸なの、どうしたら不幸じゃなくなるのという、そういう障害者に対する手立ての問題がうまくつながらないと、私はこの問題は解決しないのではないかと思います。(原田・小野,2012:96)

水俣病問題が解決していない一つの理由は、「被害とは何か」のみを問いとして掲げてきたことにある。

しかし、胎児性患者たちを障害者として(も)位置づけることは、障害学に対して「新たな」問題を投げかける。野澤(2020)の要点は、個々の心身の機能的不全としての障害(インペアメント)にではなく、社会活動に関わる不利益としての障害(ディスアビリティ)を対象とする障害学の枠組みを援用して胎児性患者たちの自立とその支援を論じた点にあるが、「こんなからだにされた」という水俣病被害者たちの訴えは、インペアメントの位相を鮮明に浮かび上がらせる。だが、ディスアビリティを社会的な問題にする過程の中でインペアメントを単なる生物学的な用語に位置づけた障害学にとって、インペアメントとどう向き合うかは積み残された課題の一つとなっている(星加, 2007; Hughes & Peterson, 1997)。もとより、歴史的に見ても、impairmentという英単語の意味は価値中立的なものであったわけではないという意味では(Ralph, 2015)、古くて新しい課題と言えるかもしれない。いずれにせよ、自立の可能性剥奪という焦点化すれば、胎児性患者たちと障害者が被る不利益に制度的な水準での質的な差異はなく、前者を優遇して扱う理由はなくなる。そこから導き出される帰結は「補償ではなくても良いではないか」である。とはいえ、胎児性患者たちは公害の被害者でもあり、この文脈上にいる以上、彼ら・彼女らの自立生活は保障ではなく、補償されなければならない。「障害とは何か」のみを問いとして掲げても、水俣病問題は解決しない。

環境社会学の研究者だけでも障害学の研究者だけでも、環境(被害)と福祉(障害)の境界線を跨ぐ水俣病問題を解くことはできない。協働が求められるゆえんであり、その先に両者の交差点が見据えられるよう、双方の分析の角度を調整していく必要がある。障害学においては、環境科学との理論的接点から自らを批判的に捉え直す潮流が確認できる(辰己, 2022)。本セッションでは、1970年代にはすでに確認できる反公害・環境運動と障害者運動の邂逅を起点にして、それから半世紀を経て両学問の出合いの場を作り出すことで、まずは環境社会学とは何かを問い直し、障害学の接点がどこにあるのかを模索していきたい。

  1. 趣旨説明
  2. インペアメントの(環境)社会学―65歳の壁という難問-
    野澤淳史(東京経済大学)
  3. インペアメントの複数性へ-障害が埋め込まれた地域を描く-
    猪瀬浩平(明治学院大学×NPO法人のらんど)
  4. 環境社会学はなぜ「反優生思想」と出会いそこねたのか―「認識論としての社会モデル」と「当事者学」の視座―星加良司(東京大学大学院教育学研究科)

企画セッション4「核兵器・原発による環境危機の中で舩橋晴俊氏の環境制御システム論の遺産をどう受け継ぐか」(12日15時~)

企画者:岡野内正(法政大学)

原発による環境危機等と取り組みつつ、生活環境主義や被害・加害構造論などを射程に入れて日本の環境社会学研究の理論的統合を企ててきた船橋晴俊氏の環境制御システム論の全貌が、遺稿集(『社会制御過程の社会学』東信堂、2018年)によって明らかになり、欧米の理論潮流(エコロジー的近代化論と「生産の踏み車」論)等も射程に入れてその意義と限界を見定めようとする試み(茅野恒秀・湯浅陽一編『環境問題の社会学―環境制御システムの理論と応用』東信堂、2020年)も現れた。

他方で、日本の環境社会学研究からSDGsを射程に入れた最近の労作(池田寛二2019「サステイナビリティ概念を問い直す」『サステイナビリティ研究』(9):7-27)は、「資源配分の決定権」に注目した点で舩橋理論を評価しつつ、資本主義のシステム転換の課題設定の中にそれを継承すべきと問題提起した。同様の問題意識から福島の原発事故に焦点を当てた日本の研究状況の整理も、その問題提起に共感しているかに見える(長谷川公一2021『環境社会学入門―持続可能な未来をつくる』筑摩書房;Koichi Hasegawa, 2021,“Japanese Environmental Sociology; Focus and Issues of Three Stages,” International Sociology Reviews 36(2): 289-301)。

ロシア軍のウクライナ侵攻によって世界は核爆弾と原発破壊による核汚染の危機にある。軍備拡張の波が日本を含む世界を襲い、SDGs達成はますます絶望的になりつつある。この情況に対峙するための学会の共通遺産として、船橋晴俊氏の理論的遺産を発展的に継承すべく、大いに議論したい。

  1. 企画趣旨説明
    岡野内 正(法政大学)
  2. パラダイムとしての環境制御システム論の再評価
    湯浅陽一(関東学院大学)
  3. 軍事システムへの環境制御システムの深化の可能性
    朝井志歩 (愛媛大学)

コメント:長谷川公一(尚絅学院大学)